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「野球待夢」

〜アニキの考え〜  浅見光彦(ルポライター)

 草野球というスポーツは中々奥が深い世界らしい。今回は不定期連載2回目ということで、前回登場の友人、諏訪部のチームメイトで、少年野球の世界から草野球の世界に入って来た異色の新人《アニキ》に話を聞いた。

 千葉市内の居酒屋で待つ私と諏訪部の前に現れた彼の第一印象は、《人の良い、おとなしそうな青年》であった。しかし10分も経たないうちに私の受けた印象は180度、修正されたのである。諏訪部の温厚な人柄を「柔」とするならば、アニキのそれは「剛」そのものである。アニキのおとなしそうに見える皮の中に、今にも皮を破り、外に放たれるのを待ち構えてる無数の「剛」を垣間見た気がしたのである。そして、この取材を終えた時には、その直感は確信に変っていたのである。

 今回はインタビュー形式でアニキの野球に対する想い、考え、理想などを皆さんに紹介したいと思います。

(以下アニキ談) そうですね!まず野球についての考えと言うことですが・・・。私が野球を始めてから、いろいろな人の話を聞きましたが、まず、ほとんどの人が「野球はピッチャーだよ!」と言います。私もその考えを持つ一人です。チームの投手が自分の責任をしっかりこなした上で、初めてその他の野手に仕事が回ってくるんです。そして、その投手にしっかり仕事をさせるのが捕手の責任になってくると思います。

(浅見)「アニキは投手にとって一番重要な事って何だと思う?」

(アニキ)自論ですが、やっぱりコントロールじゃないですかね。その次に来るのが、球の速さや、鋭い変化球だと思います。その2つもコントールがあっての話だと思いますよ。私も投手志望で、たまに投げさせて貰ってますが・・・私にはヨシトさんの様な速球もありませんし、喜一郎さんの様に、相手を仰け反らす様な大きなカーブもありません。球種もストレート、カーブ、プチスライダー(笑)しかありませんが、それでもコントロールには自信があります。100kmそこそこのストレートとカーブ(一応決め球と思い込んでる)しかない私が投手をやりたがる自信の根底には・・・そこはやっぱり「投手はコントロール」の自論があってこそなんです。

 師匠も野手なんで良く判ると思うんですが、守ってて一番嫌なのが《四球》です。野手は打者のインパクトの瞬間に合わせて、投球の内、外を見ながら、打球の方向をある程度予測してステップを入れる準備作業を必ず行いますが、フルカウントの四球(ファール無しで)なら6回のその作業が全て無駄に終わります。当然その瞬間は野手も全神経を集中するので、集中が続いて四球で肩透かしを喰らい、また集中して肩透かし・・・となると野手の緊張感が切れていきます。そんな状況でいきなり打球が飛んで来ても、エラーが増えるのは当然の結果だと思いませんか? 四球の多い試合でエラーが多いのはそういう理由もあるんです。だから試合を作るという意味で大きな責任を負うのが投手であって、試合を作るのも、壊すのも、投手次第って所がやっぱりあると思います。二遊間を守ってると投球のコースがだいたい解るんですよ!だから「今のは入ってるだろ〜」って時もありますから、そういう時は投手に同情しますけどね(笑) 逆に「どこ投げてんだ・・・」って時もありますが・・・あとは投球リズムが悪い投手の場合も守りづらい感がありますね! 間延びしちゃうというか、気が抜けちゃうというか。「早く投げてくれ〜」って(笑)

 まあ投手ってポジションは花形で、それだけ注目もされるし、球を触る数も多い訳ですから、それ位の責任を背負うのはしょうがないですよね。それでも皆が投手をやりたがるんですから(笑)

(浅見)「ということは、四球がダメだからコントロールが大事って事?」

(アニキ)それもあります。前に言ったように、投手には試合を作る大事な仕事がありますから。四球が多いと試合は壊れます! あとは四球を出さない以外にも、打者との勝負をする上で、やっぱりコントロールは必要ですよね? カウントを取る球、見せ球、ファールを打たせる球、勝負する前の布石の球、勝負球、どれを取ってもコントロールが必要不可欠になってくると思います。

(浅見)「なるほどね〜! でもコントロールが良くて、四球を出さなくても打たれる時は打たれるよね? その時はどう思うの?」

(アニキ)あ、打たれた・・・だけです。(笑)

(浅見)「そういう時は自分を責めたり、落ち込んだりする?」

(アニキ)全然そんな事ないです! プロでも社会人でも無いですし、楽しむ草野球ですから(笑)その打席は打者が勝ったという事ですよ! それにしつこい様ですけど、やっぱり四球よりは打たれた方が良いと思います。野手もプレー出来る訳ですから。

(浅見)「大分アニキの野球観が見えて来たよ!話は変るけど、投手にしっかり仕事をさせるのが捕手の責任ってあったけど、それについて聞かせてくれる?」

(アニキ)はい。やっぱり投手を生かすのも殺すのも捕手の力が大きいんですよ!つまり、言い換えると、投手がいくら良くても捕手がその力を有効に使ってくれないと結果が出ないと言うことです。実力がかけ離れていれば話は変ってきますけど・・・

(浅見)「具体的に教えてくれる?」

(アニキ)そうですね〜。まず試合前のキャッチボールだと《上手く捕る》《きちんと返球する》《良い球が来てると思わせる》この位は必要じゃないでしょうか?キャッチャーが暴投して投手が拾いに走ってる様ではダメですね(笑)練習でも試合でもそうですが、キャッチャーは必ず投手のグローブ側の肩に返球しないとダメなんですよ!投手が飛んだりしゃがんだり、右に左にグローブを出して捕球してる様では、気持ち的にも体力的にも良い投球が出来なくなります。
 試合が始まれば今度は頭を使わないとダメですよね!どうやってこのバッターを打ち取るか?って常に考えてサインを出す訳ですから。バッターの立ち位置、軸足の決め具合、前の球の見送り方、雰囲気、2順目からは前打席のデータ等を考えながら配球を組み立てて・・・ホント頭から煙が出ますよ(笑) こうした捕手の努力から生まれる配球に投手が答えて、初めて結果が出るんです! だから捕手の力ってデカイんですよ。

(浅見)「なるほどね〜! そういう事なんだ!?」

(アニキ)いや・・・あの・・・偉そうに色々言ってますけど、全部僕の勝手な持論ですから・・・これが正しいとか間違ってるとかじゃ無いんで・・・一つの考えとして聞いて下さいね(笑)

 この後もアニキは守備についてや走塁、バッティング、ベンチワーク等についても熱く話してくれた。気が付けば日付も変る時間である。今回掲載出来ない部分は、今後機会があれば第2弾として載せる事にしよう。ロッチのオールドルーキーの熱い野球論に触れ、私の草野球に対する関心も一段と強くなってしまった。次は誰の《考え》を取材するか?なるべく早く諏訪部と相談して、オファーを取ることにしよう。

取材協力   魚○ 千葉駅前店
ラ○オンベースボール

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