‖ M E N U ‖




「房総HEROES・後編」  田村 直人

 いよいよ夏の県大会が始まった。このコラムがUPされるころには多くの3年生たちが、苦しかった練習の日々が終わり、開放感に浸ってあんなことやこんなことをしていることだろう。大会の展望を書くには時期を逸したので控えるが、今年の千葉は先日発売された週刊ベースボールの別冊に「逸材王国」として特集を組まれるほど注目される選手が多い。ドラフト1巡目で指名されることが濃厚な唐川(成田)、同じく指名される可能性が高い大前(拓大紅陵)以外にも丸、大島(千葉経済)坂本(市立柏)平川(若松)、岩嵜(市立船橋)石田(東海大望洋)など上のレベルでも期待できる選手は枚挙にいとまがない。この春東都でシーズン奪三振記録を塗り替えた大場(八千代松陰−東洋大)のように、直接プロには行けなくとも高校時代注目していた選手が後々ブレイクするのを見るのは嬉しいものなので、皆さんも後のスター候補を探してみてはいかがだろうか。

5位・・・立川隆史(拓大紅陵・H4夏準優勝)

 プロ野球ファンにはロッテの立川としておなじみだろうが、高校野球ファンには甲子園での準々決勝・池田戦、1−0とリードされた9回の起死回生の逆転2ランが忘れられないのである。この年の拓大紅陵では杉本、富樫、多田、紺野の4人の投手が全員甲子園で勝ち投手になるという巧みな投手起用を記憶している人も多いのではないだろうか。
阪神移籍後2005年に現役引退後、昨年は台湾の誠泰コブラズの打撃コーチを務めたが、周知の通り現在はK−1ファイターの卵として修行中(といってもそれだけでは生活できないので、解説者や野球教室でのコーチなど多忙なスケジュールをこなしているようだ)であり、8月16日に開催される「K−1 TRYOUT 2007 SURVIVAL」での
デビューが決まっている。対戦相手は190センチ、100キロの中国拳法の使い手ということだが、果たして・・・。

4位・・・猪俣広(成田・H2夏)

 成田高校を応援している人でなくとも千葉の高校野球ファンであれば、当時の快進撃から生まれた「ミラクル成田」というフレーズを聞いたことがあるはずだ。夏の県大会、ノーシードだった成田は3回戦で名門・千葉商と対戦し、9回裏2アウトから3点のビハインドを跳ね返す大逆転劇で勢いに乗ると5回戦で学館浦安・石井一久(ヤクルト)、準決勝で習志野・持田と大会屈指の好投手との投手戦を共に猪俣の完封により制した。決勝の相手は名将・五島監督(現木更津総合監督)率いる暁星国際。北川(元ヤクルト)−小笠原(巨人)という、千葉では94年の東京学館で実現した石井弘寿(ヤクルト)−相川亮二(横浜)に次ぐ豪華バッテリーが相手だったが、疲れの見える北川から序盤から順調に点を積み重ね、6−2で快勝。35年ぶりの甲子園出場、古豪復活となった。
甲子園では初日の第一試合での登場だったため、開会式は溢れんばかりの成田市民で埋まった球場の異様な盛り上がりの中で行われ、NHKの実況アナも決勝戦を思わせる観客数に驚くばかりだった。(ちなみに今年の選抜においても成田は連続出場、平日の試合、初戦敗退と悪条件が重なったにも関わらずグッズの売り上げは全出場校中1位。成田市民の郷土愛は尋常ではない)
現在は、記憶があいまいだが船橋か習志野の市役所でプレーしているらしい。市役所対抗の大会では、ロッチで昨年までプレーしていた強打者、Y・D作氏とも対戦したようだ。
http://jp.youtube.com/watch?v=N4BnnUm3on4

3位・・・多田野数人(八千代松陰・H10夏)

 例の件についてはあまりにも有名なのでここでは触れないことにする。松坂、新垣、杉内など逸材ぞろいと言われたこの年、千葉も例に漏れず多田野、安原(中央学院−元巨人)とプロ注目の好投手を抱えていた。秋の大会はベスト4で涙を飲んだ八千代松陰は、春の県大会で優勝し、多田野自身も関東大会では初戦で桐生第一を完封、続く公式戦無敗の「最強軍団」横浜を相手に1−0で惜敗するも完投。その評価を揺るぎないものとしてのぞんだ夏、彼は5回戦東京学館戦でリリーフし最初の打者にホームランを打たれるも、なんとこの大会の失点はこの1点のみ。先発した決勝の成田、準決勝の銚子商、2回戦の志學館戦はすべて完封という圧倒的な内容で、見ていて打たれる気配が全くしなかったのを記憶している。
立教大に進学後は、甲子園で敗戦を喫したPL学園の上重を抑え、早くからエースの座をつかみ、同期の早稲田の和田(ソフトバンク)、慶応の長田(西武)、法政の土居(横浜−ロッテ)らと幾度と無くロースコアの投げ合いを繰り広げ、横浜への自由枠での入団が内定していた。

2位・・・唐川侑己(成田・H18春、H19春)
 
 成田小−成田西中−成田高ときて、父親は成田山勤務という生粋の成田市民。猪俣を擁しての出場以来15年もの間、「あと1勝で甲子園」という局面で4連敗を喫していた成田を甲子園に2回も導連れて行ってくれたことで、個人的にはすでに感謝の気持ちで一杯である(笑)。また現段階での全国的な知名度、スカウトの評価、これまでの成績等を考えれば千葉の高校野球史上最高の投手と言っても過言ではないかもしれない。特に初戦から東総工、次戦が横芝敬愛という非常に厳しい組み合わせの中50イニング近くを投げ、自責点わずか1でチームを優勝に導いた昨秋の県大会でのパフォーマンスは圧巻だった。今年の選抜、昨秋の関東大会での佐野日大戦、昨夏と大事なところで爪を割ったり体調を崩したりする点が残念であったが、最後の夏は悔いの無いように力を出し切ってもらいたい。
http://www.youtube.com/watch?v=PXzSX3Tusk8

1位・・・浜名翔(東海大浦安・H12夏準優勝)

 甲子園準優勝という輝かしい成績を残したこの年の東海大浦安だったが、前評判は決して高くなかった。秋・春共に県大会の3回戦で敗退。さらに夏の大会直前、体育のサッカーでエースの井上が怪我で離脱するという苦しい状況。しかし、このことがチームにとっては文字通り「怪我の功名」となった。普段から打撃投手を買って出ていた浜名は、セカンドから投手へ。横手投げから右打者の内角を鋭くえぐるシュートを武器に夏の千葉を制したものの甲子園での前評判は決して高くなかったが、初戦の延岡学園戦で神内(ソフトバンク)との投げ合いを制すると、さらに強打の日大豊山、横浜をたて続けに抑え込み、『背番号4のエース』として全国に名を馳せた。
しかし、準決勝あたりから疲労が見える苦しい投球が続き、準決勝の育英戦では相手のエース温存策につけ込み前半に9−0とリードするも、終盤に7点を返されての辛勝。決勝では前年の柏陵に続き、猛打の智弁和歌山の前に屈する。
浜名はこの夏の熱投の代償として肘を壊してしまい、甲子園後の全日本のメンバーにもエース格として選出されたものの、投球出来なかったばかりか、大学で野球を続けることすら断念せざるを得なかった。高校で野球人生を終える結果となってしまったことを彼自身がどう思っているかはわからないが、この夏の彼のパフォーマンスが千葉だけでなく全国の高校野球ファンの胸を打つ素晴らしいものだったことは間違いない。
http://jp.youtube.com/watch?v=icslgtmQ5no


※ 前回のコラムの澤井の欄の「福留の逆転3ラン」は勝ち越し2ランの誤りでした。
動画付きで訂正してお詫び致します。
http://jp.youtube.com/watch?v=MDri6B65Qh4

トップ画面へ  コラム一覧へ

Copyright (C) 2005- CBT-10, All Rights Reserved.